温泉津やきものの里は、島根県大田市温泉津町にある、温泉津焼の歴史と文化にふれることができる観光スポットです。日本全国でも最大級といわれる巨大な登り窯をシンボルに、陶芸体験や資料展示、窯元巡りなどを楽しめる場所として親しまれています。
石見銀山の銀の積出港として栄えた温泉津は、良質な陶土、豊かな森林資源、清らかな水に恵まれ、古くからやきものの産地として発展してきました。現在でもその伝統は受け継がれており、温泉津焼ならではの素朴で温かみのある器づくりが続けられています。
やきものの里を訪れると、まず目を引くのが長さ30メートルと20メートルにも及ぶ巨大な登り窯です。階段状に連なった窯は10段構造となっており、その規模は全国でも最大級といわれています。
登り窯とは、傾斜地を利用して複数の窯を連続して築いたもので、下段で焚いた熱を上段へ効率よく伝える仕組みになっています。温泉津では、この登り窯を使って大型の水がめ「はんど」や、すり鉢、壺、植木鉢など、生活に欠かせない実用陶器が数多く焼かれていました。
最盛期には温泉津周辺に十数基もの登り窯が存在し、薪を焚く煙が立ち込める様子は、この地域ならではの風景だったといわれています。現在は2基の登り窯が保存修復され、往時の繁栄を今に伝えています。
温泉津焼の歴史は江戸時代の宝永年間(1704〜1708年)に始まったと伝えられています。温泉津港は、石見銀山の銀を全国へ積み出す港として栄えた天然の良港であり、その物流の発展とともに温泉津焼も広く知られるようになりました。
特に有名だったのが「はんど」と呼ばれる大型の水がめです。あめ色の釉薬に黒い模様が流れる独特のデザインが特徴で、丈夫で使いやすいことから全国へ出荷され、多くの家庭で利用されていました。
しかし、時代の変化とともに水道設備の普及やプラスチック製品の登場によって陶器の需要は減少し、一時は衰退していきます。それでも現在では、民藝運動の流れを受け継ぐ窯元たちによって、温泉津焼の伝統が守られています。
隣接するやきもの館では、温泉津焼の歴史資料や作品展示を見ることができるほか、陶芸体験も人気を集めています。
特に人気なのが「手びねり体験コース」です。手回しろくろを使いながら、粘土を指先で伸ばして形を作る体験で、湯のみやコップ、小皿、ふくろうの置物など、自由な発想で作品を作ることができます。
スタッフが丁寧に教えてくれるため、初めて陶芸に挑戦する方でも安心です。自分で作った器は焼成後に完成品として届くため、旅の思い出としても特別なものになります。
所要時間:約40〜60分
料金:高校生以上 2,800円/中学生以下 2,000円
※材料費・焼成代込み、送料別途
1人分の粘土で2作品まで制作可能で、20名以上の団体には割引も用意されています。体験は予約制となっているため、事前予約がおすすめです。
やきもの館では、素焼きの神楽面やだるまに色を付ける「絵付け体験」も人気です。アクリル絵の具を使って自由に彩色でき、完成した作品はその日に持ち帰ることができます。
小さなお子様でも気軽に参加できるため、家族旅行の思い出づくりにもぴったりです。
温泉津やきものの里では、春と秋に「やきもの祭」が開催されます。祭りの前には登り窯に火が入れられ、薪をくべながら焼き上げていく様子を見ることもできます。
窯出しされた作品は、祭り会場や各窯元で販売され、多くの陶芸ファンで賑わいます。登り窯の炎や焼き物の香りに包まれる空間は、まさに温泉津ならではの特別な風景です。
温泉津は、石見銀山の交易港として発展した歴史ある温泉町でもあります。石畳の温泉街には、昔ながらの旅館や温泉施設が並び、どこか懐かしい風情を感じられます。
やきものの里を訪れた後は、温泉津温泉でゆったりと湯に浸かり、窯元を巡りながらお気に入りの器を探すのもおすすめです。温泉と焼き物、歴史文化が一体となった温泉津の魅力を、ぜひゆっくり味わってみてください。
・山陰道 江津ICから車で約25分
・山陰道 大田中央三瓶山ICから車で約30分
・山陰道 温泉津ICから車で約6分
・JR山陰本線 温泉津駅から徒歩約12分、車で約4分