源氏巻は、島根県鹿足郡津和野町の銘菓で、茶菓子として楽しまれています。薄い生地で包まれた紫色の餡は、伝統的に小豆を煮詰めた豆沙餡が使われています。
源氏巻の誕生には興味深いエピソードがあります。幕末に、津和野藩の御用菓子司である見墹情貫堂が、練った小麦粉を薄く焼いた生地に紫色の餡を詰め込んで、藩主である亀井茲監に進上しました。この時、藩主の正室である貢子(光安姫)が紫色の餡に感動し、「源氏物語」の一節からインスパイアされて「源氏巻」と名づけられたと言われています。
一説には、江戸時代の元禄の頃には、津和野藩主亀井茲親が吉良義央に辱めを受けていた際、危機を救うために家臣が吉良に献上した進物に由来するとも言われています。
現在、津和野町には源氏巻を製造するメーカーが10軒以上存在し、各々が独自の味を競い合っています。抹茶風味の餡を使った源氏巻や、衣を付けて揚げた「揚げ源氏巻」なども登場し、バラエティ豊かなラインナップが楽しめます。