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高津柿本神社

(たかつ かきのもと じんじゃ)

万葉の歌聖を祀る文学の聖地

高津柿本神社は、島根県益田市高津町に鎮座する歴史ある神社で、万葉集を代表する歌人として知られる柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)を祀っています。正式名称は「柿本神社」といい、日本各地に存在する柿本神社の中でも、本社として広く知られている由緒深い神社です。

神社は、益田市街地を見渡す鴨山(高角山)の山頂付近に位置しており、周辺は現在「島根県立万葉公園」として整備されています。自然豊かな環境の中で、万葉の世界に思いを馳せながら参拝できる場所として、多くの観光客や文学愛好家が訪れています。

歌聖・柿本人麻呂を祀る神社

柿本人麻呂は飛鳥時代に活躍した宮廷歌人で、『万葉集』を代表する歌人として知られています。後世には「歌聖」と称えられ、山部赤人と並び称される存在となりました。百人一首に収められている「あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の…」の歌でも有名です。

人麻呂は天武天皇・持統天皇・文武天皇の時代に宮廷歌人として活躍し、多くの長歌や短歌を残しました。その歌は壮大で格調高く、豊かな表現力によって今なお多くの人々を魅了しています。

益田市には、人麻呂が晩年を過ごし、この地で亡くなったという伝承が残されています。特に益田川河口付近の鴨島が終焉の地とされ、その霊を祀るために創建されたのが高津柿本神社の始まりと伝えられています。

創建と歴史

鴨島から現在地へ

神社の創建は神亀年間と伝えられています。聖武天皇の勅命により、石見国司が鴨島に人麻呂の霊を祀ったのが始まりとされています。

しかし、万寿3年(1026年)の大地震と大津波によって鴨島は海中に沈み、社殿も失われてしまいました。その後、神像が高津の松崎に流れ着いたことから、その地に社殿と別当寺が再建されました。

さらに江戸時代初期、津和野藩主・亀井茲親が海難を避けるため、高津城跡のある現在地へ神社を移築したと伝えられています。以来、高津柿本神社は地域の人々の信仰を集め続けてきました。

和歌の神としての崇敬

江戸時代になると、柿本人麻呂は「和歌の神」として全国的な崇敬を受けるようになります。享保8年(1723年)には「柿本人麿一千年祭」が盛大に行われ、「柿本大明神」の神号と正一位の神階が授けられました。

歴代天皇や公卿たちも和歌上達を願って短冊を奉納し、神社には現在も貴重な御製歌が数多く残されています。霊元上皇をはじめ、桜町天皇、桃園天皇、光格天皇など歴代天皇による和歌は、国の重要美術品にも認定されています。

美しい社殿と文化財

県指定文化財の本殿

現在の本殿は正徳2年(1712年)に再建されたもので、島根県指定有形文化財に指定されています。朱塗りの美しい社殿は、春日造を基調とした変形様式で建てられており、気品あふれる佇まいが印象的です。

屋根は檜皮葺で、正面には優雅な唐破風の向拝が設けられています。内部には等身大の人麻呂神像が安置されており、静かで厳かな空気に包まれています。

宝物殿の見どころ

境内には宝物殿もあり、歴代天皇や公卿による短冊和歌、古文書など貴重な資料が保存されています。和歌文化の歴史を伝える資料群は非常に価値が高く、文学史や日本文化に興味のある方には特におすすめです。

万葉公園と自然豊かな境内

神社の周辺には「島根県立万葉公園」が整備されており、万葉植物園や散策路などが広がっています。万葉集に登場する植物が植えられ、四季折々の花々を楽しむことができます。

春には桜、初夏には新緑、秋には紅葉が美しく、自然と文学が融合した癒やしの空間となっています。長い石段を登りながら木々の間を進む時間は、まるで古代の世界へ入り込むような感覚を味わえます。

境内からは益田市街地や日本海を望むことができ、晴れた日には素晴らしい景色が広がります。静かな自然に囲まれながら、人麻呂の歌に思いを重ねるひとときは格別です。

八朔祭と流鏑馬神事

毎年9月1日には、高津柿本神社最大の祭礼である「八朔祭(はっさくさい)」が開催されます。これは人麻呂の生誕の日に由来するとされ、多くの参拝者で賑わいます。

祭りでは古式ゆかしい流鏑馬(やぶさめ)神事が行われ、馬上から矢を放つ勇壮な姿を見ることができます。地域に伝わる伝統文化として高く評価されており、秋の風物詩として親しまれています。

また、春の例祭や節分祭など年間を通してさまざまな神事が行われており、地域の信仰の中心として今も大切に守られています。

人々に親しまれる「人丸さん」

地元では親しみを込めて「人丸さん」と呼ばれており、古くから学問成就、安産、火防、農業繁栄など多くのご利益がある神社として信仰されています。

特に「人麿(ひとまろ)」を「火止まる」や「人産まる」に通じるとして、火災除けや安産祈願に訪れる人も少なくありません。また、石見和紙の祖神としても崇敬され、地域産業との深い結びつきも持っています。

文学と歴史を感じる益田の名所

高津柿本神社は、単なる観光地ではなく、日本文学の源流ともいえる万葉文化を今に伝える貴重な場所です。1300年以上にわたり受け継がれてきた信仰と歴史、そして豊かな自然が調和し、訪れる人々の心を静かに魅了します。

万葉の歌人・柿本人麻呂の世界に触れながら、歴史と文化、自然の美しさを同時に味わえる高津柿本神社。益田を訪れた際には、ぜひゆっくりと参拝し、万葉ロマンに包まれる時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

アクセス情報

所在地:島根県益田市高津町
アクセス:JR山陰本線・益田駅から車で約10分

Information

名称
高津柿本神社
(たかつ かきのもと じんじゃ)

津和野・益田

島根県