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出雲そば

(いずも 蕎麦)

そばの実を殻ごとひく出雲そば。香り高く、コシが強いのが特徴

そばの実を皮ごとひいて作られるそば粉を用いたそば。皮ごとひいて作られるため一般的なそばと比べて色や香りが濃く、独特の味わいが特徴。水で冷やしたそばを3段に重ねた割子(わりご=重箱)と言われる丸い漆器の器に盛り、薬味(ねぎ、刻みのり、鰹節、おろし大根など)をのせ、そばつゆをかけて食す。ゆでたそばをそのまま鍋から直に器に取り、ゆで汁、そばつゆ、薬味など加えて食べる「釜揚げ」も人気の食べ方である。毎年11月に行われる「神在祭(かみありさい)」ではそばの屋台がたち並ぶ姿が見受けられる。

出雲そばは、日本三大蕎麦の一つ(他の二つはわんこそば、戸隠そば)。江戸時代に信濃国(現在の長野県)松本藩の城主であった松平直政が、徳川家光からの命令で出雲国松江藩に移る際に、松本からそば職人を連れてきたことから、出雲松江地方にそばが広まったとされています。これにちなみ、出雲市と松江市のそば組合が結成した「出雲そばの日記念日登録実行委員会」が、1638年2月11日の国替えの日を起源とし、2022年に「出雲そばの日」として日本記念日協会に登録されました。

出雲が蕎麦の名所となった理由は、奥出雲地方で蕎麦の栽培が寒さに強く、収穫までが短く、痩せ地でも育つ特性があったためです。江戸時代後期には、地域の名藩主である第7代松江藩主の松平治郷が、「高貴な人はそばを食べない」とされていた中で、夜に屋台の蕎麦を楽しむことで蕎麦の愛好者として知られ、茶人としても茶懐石に蕎麦を取り入れ、地域の産業・文化の振興に寄与しました。

出雲地方では奥の院詣りや神在月の「神在祭」の際に、門前町のそば屋で蕎麦を楽しむことが庶民の楽しみでした。神社周辺にはそば屋の屋台が立ち並び、神去出祭にちなんで行われる「釜揚げそば」が「神去出蕎麦」や「お忌み蕎麦」と呼ばれ、身体を温める儀式として食べられました。

出雲そばの製法には独自の特徴があり、蕎麦の実を皮ごと石臼で挽くため、濃く黒い色合いと強い香りがあります。食べ方も「もり」「かけ」に加えて、「割子そば」「釜揚げそば」など独自のスタイルが広まっています。青ねぎや海苔、削った鰹節の他にも、もみじおろしや辛味大根の大根おろしが薬味として使われ、これらが出雲そばの特徴となっています。

割子そば

割子そばは、茹でた蕎麦を丸い漆器に三段に重ねて盛り付け、薬味とだし汁の容器が添えられるスタイルです。これは江戸時代に松江の愛好者が野外で蕎麦を楽しむために使われた弁当箱の形式に由来しています。出雲地方では昔から重箱を「割子」と呼び、その形状は様々でしたが、1907年頃に松江警察署長の提案でヒノキを用いた厚みのある丸い漆器に変わりました。この提案は、四角形の割子が洗いにくく衛生的に問題があると見なされたためと言われています。

割子そばの食べ方も独特で、他の地方では蕎麦をだしの中に入れるのに対し、割子そばではだし汁自体が器に入り、その上に青ねぎ、海苔、大根おろし、削り節などの薬味が載せられます。三段重ねの場合、まず一番上の割子にだし汁を入れて蕎麦を食べ、終わったら残っただし汁を次の段にかけて食べるという食べ方が一般的です。

釜揚げそば

釜揚げそばは、釜や鍋から茹でた蕎麦をそば湯ごと器に盛り付け、客が自分でつゆ(割子そばと同様の濃い出し汁)を注いで濃さを調節し、青ねぎや海苔などの薬味を加えて食べるスタイルです。見た目はかけそばに似ていますが、麺を水洗いせずにそのまま供する点が異なります。そのため、ぬめりが取れないが、逆にそばの味と香りが直接味わえる特徴があります。

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名称
出雲そば
(いずも 蕎麦)

出雲・石見銀山

島根県