島根県 > 松江・玉造温泉 > 足立美術館

足立美術館

(あだち びじゅつかん)

日本庭園と日本画が織りなす美の世界

足立美術館は、島根県安来市にある日本画を中心とした美術館で、日本屈指の庭園美術館として国内外に知られています。1970年(昭和45年)に安来市出身の実業家足立全康(あだちぜんこう)によって創設され、日本画や陶芸、童画、木彫など約2,000点に及ぶ美術作品を所蔵しています。

この美術館の最大の特徴は、美術作品と日本庭園が見事に調和した空間にあります。創設者・足立全康は「庭園もまた一幅の絵画である」という理念のもと、約5万坪に及ぶ広大な日本庭園を整備しました。館内から眺める庭園はまるで一枚の絵画のように構成されており、日本画の名作とともに日本の美意識を体感することができます。

その庭園の美しさは世界的にも高く評価されており、アメリカの日本庭園専門誌によるランキングでは2003年から連続で「日本一」に選出されています。また、フランスの旅行ガイドブック『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』でも最高評価の三つ星を獲得し、日本を代表する文化観光地として多くの人々を魅了しています。

足立美術館の歴史と創設者・足立全康

足立美術館は1970年、安来市出身の実業家足立全康によって開館しました。1899年に生まれた全康は、裸一貫から事業を興し成功を収めた人物であり、その人生の後半を日本美術の収集と庭園づくりに捧げました。

彼は日本の美術作品に深い愛情を持ち、とりわけ日本画の巨匠である横山大観の作品を熱心に収集しました。その情熱は並外れたものであり、国内でも屈指の横山大観コレクションを築き上げたことで知られています。

美術館の設立時、全康はすでに71歳でしたが、その後も収集と庭園整備を続け、1990年に91歳で亡くなるまで美術館の発展に尽力しました。現在もその理念は受け継がれ、作品の収集や展示、庭園の管理が続けられています。

日本屈指の横山大観コレクション

足立美術館のコレクションの中心となっているのが、日本画の巨匠横山大観の作品です。所蔵数は約120点にのぼり、質・量ともに日本有数と評価されています。

館内では常時20点前後の大観作品が展示されており、日本画の近代化を切り開いた大観の独自の表現世界を間近で鑑賞することができます。代表作としては「紅葉」や「雨霽る(あめはる)」などの名作が知られています。

また、大観のほかにも近代日本画壇を代表する画家たちの作品が多数収蔵されています。

主な近代日本画家の作品

館内では以下のような日本画家の名作を鑑賞することができます。

・竹内栖鳳
・川合玉堂
・橋本関雪
・上村松園
・榊原紫峰
・川端龍子
・速水御舟

これらの作品は庭園の四季の変化に合わせて展示替えが行われ、訪れるたびに新たな魅力を楽しめるよう工夫されています。

現代日本画と特別展

足立美術館の新館では、現代日本画の優れた作品を紹介しています。館では「足立美術館賞」を設けており、受賞作品など約350点の現代日本画を収蔵しています。

また毎年秋には、日本美術院による展覧会である「再興院展」が開催され、日本画の最前線を紹介する場としても注目されています。近代から現代に至る日本画の流れを一望できる点も、足立美術館の大きな魅力といえるでしょう。

北大路魯山人の芸術を紹介する「魯山人館」

2020年には魯山人館が新たに開館しました。この施設では、美食家であり芸術家としても知られる北大路魯山人の作品を中心に展示しています。

魯山人は料理人としてだけでなく、陶芸、書、絵画など多方面で才能を発揮した人物です。足立美術館では約500点の魯山人作品を所蔵しており、館内では常時約120点を展示しています。

柔らかな光の照明で設計された展示室では、陶芸作品の細かな質感や色彩をじっくりと鑑賞することができます。

童画や木彫など多彩なコレクション

足立美術館では日本画だけでなく、童画や木彫、漆芸など多様な美術作品も所蔵しています。

童画とは子ども向け雑誌などに掲載された絵画のことで、かつては芸術としてあまり評価されていませんでした。しかし、大正から昭和にかけて多くの画家が活躍し、独自の文化を築いていきました。

館内では林義雄鈴木寿雄武井武雄などの作品を展示し、日本の児童文化の魅力を紹介しています。また彫刻家平櫛田中による木彫作品なども鑑賞することができます。

世界が認めた日本庭園

足立美術館を語るうえで欠かせないのが、約5万坪に及ぶ広大な日本庭園です。庭園は著名な造園家中根金作によって設計され、苔庭の整備には小島佐一も参加しました。

庭園には枯山水庭、苔庭、白砂青松庭、池庭など複数の庭があり、それぞれ異なる趣を持っています。また、背景に広がる勝山などの自然の山々を取り込む「借景」という造園技法が用いられ、庭園と自然が一体となった壮大な景観を作り出しています。

枯山水庭

枯山水庭は白砂と石組みによって自然の山や滝を表現した庭園です。三つの立石が山を象徴し、そこから流れ落ちる滝が白砂へと続く景観が描かれています。

苔庭

苔庭は杉苔を中心に柔らかな曲線を描く庭園で、静かな美しさが魅力です。赤松はすべて斜めに植えられており、山の斜面で育った木の自然な姿を再現しています。

白砂青松庭

白砂青松庭は横山大観の名作「白沙青松」をモチーフに造られた庭園です。白い砂丘のような丘陵と松の緑が美しいコントラストを描き、まさに日本画の世界をそのまま再現したかのような景観が広がります。

池庭

池庭は水面に映る景色が美しい庭園で、四季によって異なる表情を見せます。秋には紅葉が水面に映り込み、冬には雪景色の静かな美しさを楽しむことができます。

生の額絵・生の掛軸という独自の演出

足立美術館では、庭園をまるで絵画のように鑑賞するための工夫が随所に施されています。その代表的なものが「生の額絵」と「生の掛軸」です。

館内の窓枠を額縁のように見立て、その向こうに広がる庭園を一幅の絵画として鑑賞する仕組みです。季節や時間によって景色が変化するため、同じ場所でも訪れるたびに異なる美しさを楽しむことができます。

茶室で味わう日本文化

館内には茶室寿楽庵があり、抹茶と和菓子を楽しむことができます。純金の茶釜で沸かした湯を使った抹茶が提供され、庭園を眺めながら静かなひとときを過ごすことができます。

茶碗には島根県内の窯元の作品が使用され、お菓子には地元の和菓子店の銘菓が用意されています。美術鑑賞の合間に、日本の伝統文化を体験できる人気の施設です。

アクセスと観光情報

足立美術館へはJR山陰本線安来駅から無料シャトルバスが運行されており、約20分ほどで到着します。また、安来インターチェンジからは車で約8kmの距離にあります。

駐車場は大型バス30台、普通車400台が利用でき、観光バスでも訪れやすい施設です。

日本の美を体感できる観光名所

足立美術館は、日本画と日本庭園が調和した独特の美術館として、国内外から高い評価を受けています。四季折々の庭園と名画が織りなす景観は、訪れる人々に深い感動を与えてくれます。

春の新緑、夏の深い緑、秋の紅葉、冬の雪景色と、どの季節に訪れても異なる魅力を楽しむことができるため、山陰地方を代表する観光地の一つとして多くの人々に愛されています。日本の美意識を五感で感じることができる場所として、ぜひ訪れてみたい美術館といえるでしょう。

Information

名称
足立美術館
(あだち びじゅつかん)

松江・玉造温泉

島根県