由志園は、島根県松江市八束町の大根島に位置する、山陰を代表する本格的な池泉回遊式日本庭園です。牡丹の名所として全国にその名を知られ、さらに江戸時代から続く伝統産業「雲州人参(高麗人参)」の産地としても有名です。四季折々の花々とともに、日本庭園の美、伝統文化、そして最新のアート演出までを体感できる観光庭園として、多くの来園者を魅了し続けています。
由志園は1975年(昭和50年)4月、初代園主・門脇栄氏によって開園されました。大根島の観光振興を願い、「観光産業の推進こそ天恵に応える郷民の務め」という強い志のもとに築かれた庭園です。園名は、自らの名ではなく父・由蔵氏の「由」の字をいただき、「志」と合わせて由志園と名付けられました。
昭和45年(1970年)より造成が始まり、幾度もの工事を重ね、現在では約1万2千坪(約4万平方メートル)という広大な敷地を誇ります。園内は池を中心に巡る回遊式庭園で、奥出雲の渓谷や斐伊川の流れ、宍道湖や中海の風景、さらに霊峰大山の姿までも模した「出雲の國の箱庭」となっています。
春の由志園最大の見どころは、ゴールデンウィーク期間中に開催される「三万輪の池泉牡丹」です。苗の育成のため摘み取られる牡丹の花を活かせないかと考え生まれたこの演出では、約三万輪もの牡丹が池の水面を埋め尽くします。紅白の縦縞が美しい大根島特有の品種「島錦」や、巨大輪の「聖代」などが咲き誇る様子は、まさに百花の王の名にふさわしい壮観な景色です。
屋内施設「牡丹の館」では、特殊な抑制栽培技術により一年中牡丹を鑑賞することができます。季節を問わず満開の牡丹が咲く空間は幻想的で、国内外のトップアーティストによる企画展も開催されます。伝統と芸術が融合する特別な展示空間として高い評価を受けています。
夏には「出雲の國の夏座敷」と題し、庭園を涼やかに演出します。ドライミストの噴霧や日傘の貸し出しなど、暑さ対策も万全です。竜渓滝の豪快な水音、花菖蒲や紫陽花の彩りが、涼を誘います。黒松の緑と岩肌を流れ落ちる滝の景観は、大根島から望む大山の稜線を表現しており、自然美と庭園美が見事に融合しています。
秋には山陰最大級の池泉回遊式庭園を舞台に、紅葉のライトアップが開催されます。紅葉橋や赤橋周辺は特に人気の撮影スポットで、池泉に映る紅葉の色彩は昼間とは異なる幻想的な世界を創り出します。冷え込みが増すと「下紅葉」も見頃を迎え、園内は深い秋色に包まれます。
冬の由志園は、約130万球のLEDが灯る県内最大級のイルミネーションで華やかに彩られます。雪の中で咲く冬牡丹は、春とは異なる凛とした美しさを見せます。寒牡丹庭園では、霜よけの薦に守られながら静かに咲く花々が、侘び寂びの世界を感じさせます。
大根島は牡丹と並び、高麗人参の名産地としても知られています。雲州人参は、松江藩が藩財政を支えるために始めた殖産興業で、茶人大名・松平不昧公の時代に成功を収めました。園内には「雲州人参ミュージアム」や復元された人参方長屋門があり、無料で人参茶の試飲体験もできます。
「御種人参茶カフェ」では、人参を使用したスイーツやドリンクなど、多彩なメニューが揃います。さらに牡丹やカミツレなどの天然エキスを配合したスキンケア商品も販売され、お土産としても人気です。
園内には料亭「菖蒲」、日本料理「竹りん」、食事処「紅葉」「禅」、茶房「一望」など、趣の異なる飲食施設が充実しています。大根島産100%の蕎麦や地元素材を使った会席料理など、幅広い食事スタイルに対応しています。
特に「高麗人参豆腐鍋」や「鰻の大根島溶岩焼き」は名物料理として高い人気を誇ります。庭園を眺めながらの食事は、旅の特別な思い出となることでしょう。
由志園では「池泉牡丹」や「池泉天竺牡丹」などの花イベントのほか、プロジェクションマッピングやARアプリ、ホログラム、三次元立体音響など、最先端技術を取り入れた演出も行われています。伝統的な日本庭園の枠を超え、新しい庭園文化の創造に挑戦し続けている点も大きな魅力です。
松江駅から市バスで約46~52分、「由志園入口」下車徒歩約4分。境港駅からはコミュニティバスで約41分、米子駅からは車で約35分、米子空港からは約15分と、山陰各地からのアクセスも良好です。無料駐車場も完備されており、団体旅行や家族連れでも安心して訪れることができます。
由志園は、牡丹の華やかさだけでなく、出雲の自然、歴史、伝統、そして現代アートを融合させた総合的な文化観光施設です。春夏秋冬それぞれに異なる魅力を持ち、一年を通して何度訪れても新しい感動に出会えます。
中海に浮かぶ大根島で、日本庭園の美と花の力、そして山陰の豊かな文化をゆったりと味わってみてはいかがでしょうか。